水墨画は、中国において唐の時代(西暦700年ごろ)に成立し、日本へは鎌倉時代に禅宗とともに伝わったといわれています。
その後、室町時代に全盛期を迎え、足利氏の禅宗庇護のもと、禅寺から多数の画僧が生まれ、また、武家出身の画家も誕生しました。
「水墨」という言葉は「水暈墨章(すいうんぼくしょう)」に由来しますが、墨による表現は隋の時代からあり、煤を用いた表現はさらに遡ることができます。
「水墨画」に対して「墨絵」という呼び方があります。
厳密に言うと、「墨絵」と「水墨画」には違いがあり、「墨絵」はもう少し広い意味に使われます。
煤、つまりカーボンを用いた絵画全般を墨絵という大きなくくりで表していて、包括的な呼び方になります。
人類の絵画表現は約4万年前に遡りますが、煤を用いた表現は約2万年前の洞窟壁画から見られます。
初期のものは赤土など自然の物から着色して描いた表現でしたが、人の進化とともに想像力が芽生えてくると、燃えカスの炭やたいまつの煤で表現したモノトーンの絵画が誕生します。
約2万年前のモノトーンの壁画には、燃え残りの炭で描いたり、たいまつの煙で手形を抜いたり、煤の粒子でぼかしを描いたり、燃え残りの炭を唾液で練って描いたりしていることが見受けられる点では、これがまさに墨絵のルーツと言ってよいでしょう。
これらの表現が、人類の移動と主に世界に広がり、中国で煤と膠を混ぜて作る墨へと発展したと考えられます。
「墨絵」は、墨などを使って描いた絵のことを言い、「水墨画」は、煤と膠を混ぜて作った墨を水で薄めて濃淡で表現したものだったり「にじみ・ぼかし・さえ・かすれ」などの特有のテクニックを用いたものを言います。
また、墨を使って描いた絵に色を入れた作品は「墨彩画」と言います。
しかし、最近では、墨で描いた絵のすべての総称として、広い意味で「墨絵」と呼ばれることもあるようです。
私は、水墨画に限らず、色々なタイプの作品を制作する関係上、「墨絵画家」と名乗ることにしました。